フォニックス理論とは?

 そもそも英語のつづりと発音のずれが大きいといわれるのは、なぜでしょうか。理由はだいたい次の三つにまとめられます。

1. 音の数(約60種)に比べてそれらに対応するアルファベット(26文字)が少なすぎる。
2. 英語のつづりのもととなるものが複数あり、そのあいだに関連性を見いだしにくい。
3. 発音が時と共に変化しているにも関わらず、つづり字は1600年代からほぼ変わっていない。

 さて、理由はどうあれ、英語のつづりを覚えるのは私たち日本人だけでなくイギリス人やアメリカ人の子供たちも頭痛の種なのです。そのような状況下で、このフォニックス理論は生み出されたわけです。この理論によれば、英単語の約80パーセントはルールに従って読め、残り2割の例外を覚えればよい、ということです。例外が20パーセントというのは、多く感じますが、それでも英語のつづりが全く無秩序だと考えて、ローマ字読みでただ覚えてゆくよりは、はるかに効率的な学習法だと思います。

 それに加えて、日本語と英語の音構造の違いを理解させるのにもこの理論は有効です。つまり、日本語の音構造が母音と「ん」を除いてすべて「子音+母音」であるのに対し、英語では最後が子音で終わったり、連続子音が多用されています。駐在員時代の話で恐縮ですが、一人のアメリカ人が私にこう質問したことがありました。「なぜ日本人はdrums[drumz]を [doramuzu] と発音するのか。」これはつまり、英語では “drums” は一音節(母音がひとつ)の単語ですが、日本人が発音すると4音節になってしまう、ということです。下線を引いた母音が彼らには奇妙に響くのです。私はローマ字で日本語の50音表を書いて日本語には子音だけでの音は(「ん」を除いて)存在しないため、子音の後ろに何か母音を入れずにはおれないのだ、と説明しました。フォニックスでは子音だけを発音する訓練をしますので、このあたりのジャパニーズ・イングリッシュといわれるところを意識的に変えていくことが可能です。

 さてせっかくですのでひとつだけルールをご紹介いたしましょう。
これは「マジック”e”」と呼ばれ、単語の最後に”e”がつくとその前の母音をアルファベットの名前読みするというルールです。
 例えば、 “tap” は 「タップ」[t+æ+p] のように “a” を [æ] と発音しますが、 “tape” と最後に “e” がつくと 「テイプ」[t+ei+p] のように “a” を [ei] つまり「エイ」と発音するというものです。このルールを知っていると “make” 「メイク」 “cake” 「ケイク」 “bake”「ベイク」なども読めますし、”nine” “fine” “mine” も同様に “i” を「アィ」と読めばそれぞれ「ナイン」「ファイン」「マイン」と正しく読むことができます。 “have” や “give” は例外的な読み方となるわけですが、これらを仮に知らないとして、「ヘィヴ」とか「ガィヴ」と読んだとしても、ローマ字式に「ハべ」とか「ギべ」などと読むよりは、こういう言い方も何ですが、「英語的な」間違い方と言えましょう。

 よく映画などでアメリカの地下鉄の壁などに “love” を “luv”、 “light” を “lite” と書いてあるのを見ますが、これらはフォニックスルールに従った正しい(?)ミススペリングの例と言えます。

 2020年度からようやく、小学校で「読む」「書く」が導入されることが発表されましたが、おそらくこのフォニックス理論を用いての学習となると思われます。