”Good job!” 英語圏の人々は何かにつけ、こう言って人を励まします。本来は「良い仕事をした。」という意味ですが、「がんばったね。」「よくやったね。」「お疲れさま。」こんな日本語にしっくりくる表現です。私が読んだ話で、読み終わったあと思わず “You did a really good job!” と呼びかけたくなった実話がありました。かつて Asahi Weekly に掲載されていた記事で、筆者は確かカナダ人でした。では、和英対訳形式でご紹介しましょう。
私は最近一人のカーニーによって書かれたこんな話を読みました。カーニバル “carnival”、つまり移動遊園地で働く人のことを、私たちはカーニー “carny” と呼んでいます。このカーニーは「年令当てゲーム」のコーナーを担当していました。お客さんは2ドル払って、このカーニーに自分の年を当てさせ、もしはずれたら賞品をもらえる、というゲームです。
I recently read this story by a carny. A carny means a guy who works at a carnival, a traveling amusement park. This carny was an age-guesser. A customer would pay $2 and hope that the carny couldn’t guess his correct age within two years. If the customer won, he got to choose a small prize.
しかし、ほとんどの場合はずれることはありませんでした。というのもこの年令当てには上下2才の幅が許されるという条件が付けられていたからです。例えばカーニーが「お客さまは46才です。」と答えた場合、その客が44才から48才の間であれば、カーニーの勝ちで、賞品はなし、というわけです。万一はずしたとしても、お金は返してくれませんし、賞品といっても2ドルを越えるものではなかったでしょう。でも所詮遊園地でのお遊びなので、誰もそんなことを気にする人などいません。
The carny almost always won because he actually had a spread of five years to get the right age. If he guesses 46 and the customer is anywhere from 44 to 48, he wins – no prize. Of course even if he’s wrong, he still keeps your money, which is probably worth more than the prize anyway. But it’s mostly for fun, so no one really minds.
さて、そんなある日、ひとりの素敵な老婦人が挑戦者としてやって来ました。カーニーは前に100才のお年寄りたちの写真を見たことを思い出し、およそその辺りだとふみました。観客が見守る中でステージに上がったおばあさんの頭上に、カーニーは「100」と書いたカードを掲げました。挑戦者はステージ上で椅子に座り客席に向かって座っているのでその数字は最後まで見ることができないのです。観客の中にそのおばあさんの家族がおり、カーニーが100と書くのを見ると顔つきがくもりました。
One day a sweet, old woman took the challenge. The carny remembered some photos he’d seen of people who’d lived to 100 and thought she was about the same. The crowd watched as he wrote 100 and held it up over her head – the customer is always the last to see the guess. In the crowd was the woman’s family, and when they saw him write 100, their faces fell.
その瞬間、カーニーは胸につけられた花のコサージュを見て、今日がこのおばあさんの100才の誕生日だとピンときました。カーニーはその年をズバリ当ててしまったのでした。彼はすばやく状況を判断し、「おばあさま、お幾つでいらっしゃいますか?」と尋ねました。「今日で100才になりました!」と彼女は顔を輝かせながら大きな声で答えました。「それはおめでとうございます。神様の祝福がありますように。とてもお若く見えますね。私の当てた年令は72才だったんですよ。私の負けです。今賞品を取って来ます。」こう言ってカーニーはステージを降りて行きました。
The carny sensed that it was her birthday because she was wearing a pretty flower. And he’d just guessed her correct age. So he thought he’d better fix the situation fast. “How old are you, darling?” he asked.
“I’m 100 today!” she gleamed.
“God bless you,” he said. “You look marvelous. I wrote down 72. Now I go get your prize.”
おばあさんは大喜びでした。また家族も本当に嬉しく思いました。そして見ていた観客の一人一人の心も暖かいものでいっぱいに満たされました。そして、それは当のカーニー本人も同じでした。
She felt great, and so did her family, everyone in the crowd and, of course, the carny, too.
このようなお話でした。厳しい営利第一主義の現代社会の中で、このカーニーの機転には本当に救われる思いがします。現実的に考えて、ひょっとすると彼は安い給料で働かされていたかもしれません。移動遊園地などと楽しそうな場所に見えても、ビジネスとなれば話は別です。雇い主からは毎日の売り上げの少なさをぼやかれていたかもしれません。1ドルでも多くの利益を上げることに専念するのが彼の「良い仕事」だったでしょう。しかし、この場面での彼の機転と行動は「人を幸せにする」という本来のカーニーの職務にもっとも忠実な、本当の意味での「良い仕事 – Good job!」であったと、私は深く思わされました。そして大切なのは、本当によい仕事をしたとき、嬉しく思うのは、相手だけではなく、なによりも自分自身である、ということです。
私たちの日常は、繰り返しの毎日であり、ともすると惰性と現実的な出来事の中で自分の仕事の本来の意味を見失ってしまうことがあります。もし仕事に喜びがなくなっているならば、どこか本末転倒になっていないか、再確認する必要があるかもしれません。
私自身、英語を教えはじめて30年以上になります。教えることが本当に楽しい毎日ですが、今一度初心に戻って、いろいろな思いをもって来られている生徒さんお一人お一人に対して、このカーニーのような「良い仕事」をしたいと、改めて襟を正された思いです。
